歳を取らないおばあさんの話。
最近、人様のブログへ勝手にお邪魔しては、勝手に読者になっている私です。(特に今日)。
いろいろな方のブログを拝見していて、面白いブログやためになるブログなど、魅力的なブログをたくさん見ています。
そんな中で、特に面白かったと感じたある方のブログがあり、怖い話を書いてらっしゃいました。
基本的には怖い話のブログではなく、いろいろ書いていらっしゃるようです。音楽系かな?BGMを載せていらっしゃいました。
私は画像ばかりのブログが多いのですが、ちょっとライター意識をくすぐられたので(そっちが一応本業です)、
たまには徒然と書いてみようと思います。
ちなみに実話です。
歳を取らないおばあさんの話
息子がまだ幼稚園の年少くらいだったから、今から8年くらい前の話になる。
朝、幼稚園に送るためにママチャリの前のイスに息子を乗せて、せかせかと駐車場で準備していたときのことだ。
道路の向こう側に、白髪の髪の毛を金髪に染め、ミニスカートを履き、裸足でサンダルを引きずりながら歩いているおばあさんがいた。
80歳前後くらいにしか見えず、そのいでたちにびっくりしたのをよく覚えている。
見ていたら目が合ってしまった。と思ったら、真っ直ぐこちらへ歩いてくる。ちょっとびびる私。
「かんなんさんの妹さんだねぇ?」
いきなり話しかけられて、うん、ともすん、とも言えず見つめていると、
「弟もいたでしょぉ?すっかり大きくなってこの前…%&?&%#&*%」
勝手にいろいろ話し出して止まらない金髪のおばあさん。どうやら、私をかんなんなんたらと間違えているらしく、
幼い息子がかなり怯えているので、私は適当に相づちをうって、それではまた、と、ママチャリでそそくさと離れてしまった。
振り返ると、おばあさんはサンダルを引きずりながら反対方向へと歩き出したところだった。
その数日後、近所のママさんたちと話す機会があり、そのおばあさんの話が出た。
どうやら、最近このあたりを徘徊しているらしく、いでたちに共通点がある。
金髪にミニスカート、裸足でサンダル。
なんだろうね、ということで、その話は終わった。
3年後、私はまたそのおばあさんに遭遇した。
今度は、自転車で買い物に行った先の大型スーパーの脇の道路上だった。
おばあさんの髪の色が、白髪をピンク色に染めたものに変わっているほかは、やはりミニスカートに裸足のサンダル、しかもそのとき真冬である。
私を見て、何か言いたそうにしたが、向こうへとサンダルを引きずりながら歩いて行ってしまった。
覚えていたのだろうか。わからない。
その後たびたび、おばあさんを目撃するようになる。
いつもおばあさんは道を歩いていて、あるときはバスの中から発見する。またあるときは、車の中から発見する。
どこかのお店の中からウィンドウ越しに発見する。
かなりバラバラな場所で目撃するのだ。
怖いというよりは、不思議で、家はどこなんだろうか、とか、寒くないのだろうか、身寄りがいないのだろうか、などいろいろと想像を巡らせたが、本人に聞かない限りはわからないのだった。
その後、4年ほどが経ち、数年間見かけることがなかったおばあさんが、またいた。昨年のことだ。
一番始めに話しかけられたのと同じ、自宅の駐車場の前に、おばあさんがいた。
たまたまバッタリ会っただけで、おばあさんがそこにずっといたわけではなく、通りすがりだっただけなのだが、ちょっと驚いた。
近くで見た8年前と、何もかもが全く変わらないからである。
髪は金髪に戻し、ミニスカートに裸足のサンダルで、8年前の再現のようだった。
よく考えれば、人のことをじろじろ見るのはよくない。でもそのときは、つい、驚きで見つめてしまっていた。
すると、おばあさんの目に何か輝きのようなものが戻ってくるのを見た。
まるで、今までどこか違う世界にいて、今戻ってきた人のような目だった。
そして、
「かんなんさんの妹さんだねぇ?」
と、言った。
かんなんさんって一体誰なんだろう、と思い、
「かんなんさんですか?」
と、おうむ返しに聞いてみたら、
うん、うん、やっぱりねぇ、
かんなんだよ。
「かんなんだよ。かんなんだよ。でもねぇ、家に帰らないといけないから」
と言う。私は声が小さいほうなのだが、ちゃんと聞こえているようだった。
家、というワードが出てきたのが気になり、
「ご自宅はどちらなんですか?」
と思いきって聞いてみた。もし、徘徊しているなら危ないし、
何かがどうにかなるかもしれない。何か、と言っても、具体的なブランなどなかったのだが。
おばあさんは、かんなん、かんなん、とブツブツ言いながら、
「アッチ。かんなんがいるからねぇ。あれは生きていないから、言ってもわかんない」
と、道の彼方を指さしながら意味不明なことを言った。
「送りましょうか」
一応、心配になってきたので申し出ると、
ニヤッと笑って顔の前で手をふりふりし、
「帰れるから大丈夫。かんなんさんの妹さんだねぇ」
とまた言い出した。
かんなんさんは生きていないらしく、家は向こうの方角にあり、たぶん認知症であり、私をかんなんさんの妹だと思っている、
ところまで整理した。
これはどうしたものか、交番に行くべきか、でも、
おばあさんは道をただ歩いているだけである。
おばあさんは、特に挨拶もなく、またサンダルを引きずりながら歩いて行ってしまった。
かんなんは生きてない。
ちょっと怖くなった。
後日私は見てはいけないものを見てしまう。
それは、図書館で見つけたものだ。
今からだとちょうど1年前になるが、家族で図書館に行った時に、区報の年鑑を興味本意でパラパラめくっていたら、
平成7年の記事にたどり着いた。ただのちょっとしたペーパーブックである。
なんたらのお祭り、という地区祭のイベント写真がカラーで載っていた。
その写真の隅っこに、道を歩いている、あのおばあさんが写っていた。
それは、最後に見かけたときと全く変わらない風貌、いでたちの、あのおばあさんに間違いなかった。
約20年前ということになる。
私は黙って区報を閉じて、棚に戻した。
最近、あのおばあさんは見かけませんが、
「かんなん」
というのは名前のことなのか、何か別のもののことなのか、ちょっと気になるこの頃です。
ちなみに、調べてみたところ、かんなん、というのは困難に遭う、という意味があるそうです。
でも、おばあさんの言い方は、何か人の名前みたいなニュアンスでした。
終わり。
skyaya